ギャンブル依存症を巡る最近の動向

Written by insuffer on 2021年1月19日 in with no comments.

新型コロナウイルス感染症の流行蔓延を受けて、IR(統合型リゾート設置推進法案)の具体化は停滞しています。
しかし経済成長のスピードが鈍化し、新たな起爆剤となりうる産業の育成も難しいなかでいわゆるインバウンド需要を見込める観光業が、今後の日本経済で重要な役割を担うことは明らかで、将来的にはIR事業は具体化に向けて推進するものと見られています。
IRは日本国内で初めてカジノ事業を合法化するものです。
カジノといえばラスベガスやマカオなど海外旅行では訪問する方も少なくない人気の観光地では、営業しているのが一般的と言えます。
それにもかかわらず、長らく日本にあってカジノが解禁されてこなかった理由の一つに、ギャンブル依存症の問題が存在していたのは確かです。

ギャンブル依存症とは

ギャンブル依存症とは、賭博や競馬・競輪などの公営競技にのめりこむことにより、経済的社会的に葛藤を抱える上京にあることを意味する言葉です。
今般のいわゆるカジノ法案制定にあたっても、ギャンブル依存により借金を抱え込んだり自己破産するなど経済的に破綻する人人の増加をいかに食い止めるか、が大きな課題となりました。
カジノ解禁より先にすでに日本では、ギャンブル依存症患者の数の多さは社会的問題と認識されており、その対策は喫緊の課題とされていたわけです。
カジノを解禁すれば、さらにギャンブルにのめりこむ人が増加することが懸念されたことが、カジノ反対派の大きな論拠とされていました。
そのような事情を背景にして、2018年7月6日に、「ギャンブル等依存症対策基本法」(以下、対策法)が成立しました。
この法律で画期的だったのは、これまで位置づけが曖昧だったパチンコについて、明確にギャンブルの一種と分類されたことにあります。

日本のギャンブル依存問題の8割方はパチンコ

そもそも日本のギャンブル依存問題の8割方は、パチンコにかかるものです。
ところがこれまで、あくまでパチンコは「遊戯」であってギャンブルではないとされてきました。
店内での換金をおこなわない、いわゆる「三点方式」を採用することで批判を回避してきました。
しかし実質的に換金目的で商品への交換を隠れ蓑にしているのは明らかで、従来より批判や疑念が提起されてきたところです。
それがようやく今回の対策法の成立で、パチンコはギャンブルの一種と認識されることになりました。
対策法はこのように従来、線引きが曖昧だったギャンブルの定義を明らかにし、法律による網を明確にすることで、国の責務や基本計画の策定などを義務付けているのが内容です。
なお参議院で可決するにあたって、11項目におよぶ付帯決議が付きました。
本来であれば付帯決議などの形にするまでもなく、法律の中身に取り込めば住む話です。
ところが多くの付帯決議を付けないことには、決議にまでこぎつけることが困難だった事情を垣間見ることができます。

付帯決議のポイント

付帯決議のポイントは、カジノ利用制限や入場管理、ギャンブル問題の相談窓口の設置・公営競技のインターネット投票のありかたなど、を検討することにあります。
運用面にあたっては、5月に啓発週間を設定し青少年世代にギャンブル問題の啓発に取り組み、アルコール・薬物問題への対策と有機的に連携を深めながら予算の確保に努めることが注記されました。
今後のギャンブル対策の流れは、基本法施行に基づき関係者会議への諮問→国の基本計画の策定→とど王府県推進計画の策定(努力義務)ということになります。
ギャンブル等依存症対策基本法の成立施行により、日本国内においてもギャンブル依存症対策が官民上げて対策に向き合うことがようやく端緒につくことになりました。
問題解決に向けてのはじまりにすぎず、今後も大きな課題に直面する状況に変わりはありません。

ギャンブル産業の「応益負担の負担」が具体化されている

特に諸外国ではギャンブル産業の「応益負担の負担」が具体化されていますが、対策法では事業者の責務として、「依存症の予防等(発症・進行・再発防止)に配慮するよう努めなければならない」と規定されているにすぎません。
あくまで努力義務であって、ギャンブル事業者に強制的に負担金を徴収するなど実効性のある内容には程遠い内容です。
しかもギャンブル業界関係者の影響も懸念されるように、対策計画を左右する「関係者会議」では、ステークホルダーの主張が錯綜し、どこまで実効性のある対策がとれるのかも不透明感が漂います。
このようにギャンブル依存症対策には、曖昧な部分が大きいものの最近では、いくつか具体化する動きも見えてきました。
そのひとつが2020年4月1日からギャンブル依存症が公的保険の適用対象に指定されたことです。
これまで全額自己負担であった治療も、保険適用により廉価な費用負担で治療を受けることが可能になりました。
依存症の患者同士がグループで、経験を語り合うことで依存症からの脱却につながる治療の普及などが期待されています。
2021年の新年度以降は全都道府県と政令指定都市で、治療拠点を整備するもとされているようです。